「もう逃げましたから。そばにはいられないと思って遠くへ逃げました。向こうから見ていたんです、我が家が燃えるのを見たくなくて。」

これは、2015年8月25日の夜に愛知県豊田市保見ケ丘で火事が起きた家の“隣の家”の住人の女性の方の言葉です。この方の家は、隣の家から起きた火事が延焼したことで全焼してしまいました。そして、その隣人の言葉はこう続きました。

「命があれば良いと思って。もういい加減にしてくださいという感じ。」「いい加減にしてください」という隣人のこのやるせなさを表す言葉には、ちゃんとした理由かあるのです。実はこの出火元になった家というのは、いわゆるゴミ屋敷だったのです。

自分が使って捨てられなかった物や、ごみ収集場所やごみ集積所などどこからともなく持ってきたゴミを、家や部屋の中だけでは収まらず外にまで溢れるくらいあったのです。ゴミが家の外にまで溢れているとなると、放火でもされたらすぐに燃えてしまったでしょう。

家や部屋中ごみだらけですので、ゴキブリやネズミの暮らしやすい環境でしたでしょうから、衛生面から見ても最悪だったと思います。また他の近隣住民の方によると、ゴミ屋敷からは大量のゴミから放たれた異臭が、それも風向きによって非常に強烈ものだったようです。

しかもそれら大量のゴミが原因で何回かボヤ騒ぎまであったらしく、近隣住民の方々は「いつか火事になるのでは」という不安を抱いていたのです。そしてそれが現実のことになってしまった…火事が延焼して家が全焼してしまった隣人の方にしてみれば、本当に「いい加減にしてほしい」という思いだけじゃ済まない話です。

全国にどれだけのゴミ屋敷・ゴミ屋敷予備軍があるかわかりませんが、平成21年に国土交通省が全国を対象とした調査では、全国250市区町村でゴミ屋敷が確認されました。

となると、きっと「隣の家がゴミだらけ…」とか「近所の家にゴミが溜まっている…」という状況の方も、少なからずいらっしゃるのではと思います。もしも隣の家がごみ屋敷で、その家が火元になって火事が起きてしまったら…どうしたら良いのでしょうか?

今回は隣近所のゴミ屋敷から火事が起きた時に備えて、知っておくべきこと・やっておくべきことを紹介していきます。


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1 ゴミ屋敷で火災になり得る例

大量のゴミがあるということは、ひとたび火が起こるとすぐに燃えて広がってしまうでしょう。ゴミ屋敷の火事の原因について紹介します。

(1)火の不始末

冒頭で紹介した愛知県豊田市のごみ屋敷火災の原因は、ゴミ屋敷の家主が1階で炊いていた「蚊取り線香」の火が、ゴミや衣類に引火して起きたようです。ゴミ屋敷でなくても、火災の原因の第2位にくるのが「タバコ」ですから(総務省消防庁発表の平成26年度(1月~12月)における火災の状況(確定値)より)、いくら小さな火であっても火の不始末が火災の大きな原因となり得るのです。

タバコの他にも、コンロの火の不始末や、焚き火の不始末や、ストーブなどの火を使った家電製品も原因にあります。

(2)放火

平成26年度の全火災の出火原因によると火災の原因の第1位は「放火」です。また第4位は「放火の疑い」がきます。意外かもしれませんが、放火が原因で起きる火災というのは非常に多いのです。

ゴミ屋敷のような家の中はもちろん外にまでゴミが溢れている家というのは、放火する側の人間からしてみれば「どうそ放火してください。放火しやすい環境ですよ」と言わずとも表現しているようなものです。

放火をしてしまった人の動機は様々なのですが、ストレスが溜まってしまったり、ちょっとしたイライラしまったりと、些細な理由から放火したという人がいます。そのような人にタバコやマッチなどの火種をポイッと投げ入れられたら、燃えやすい環境ですのですぐに燃え広がってしまうでしょう。

(3)ホコリに引火

ゴミ屋敷ですからゴミと同じように「ホコリ」も至るところに溜まっているでしょう。そうなると、いわゆる「トラッキング火災」と言うのですが、コンセントに差し込んだプラグと挿入口の間にたまったホコリに着火して火災が起きてしまうのです。

ホコリに引火
出典:https://goo.gl/drqFks

トラッキング火災が起きやすいのは、長期間差し込んだまま放置しているコンセントや、湿気の多い場所にあるコンセントだと言われています。ゴミがどんどん溜まっていくゴミ屋敷では、掃除や片付けといったことがなされずコンセント自体がゴミに埋もれてしまい、ホコリまみれになったコンセントから火が起きてしまいます。

これらの原因から、ゴミ屋敷はゴミが多いため、ゴミに火が移って燃え広がるのは容易に考えられるので、一般的な家と比べて火災が起きやすいのではとされています。

2 ゴミ屋敷の近隣・周辺の家がしておくべき対策

「自分の家の近所のごみ屋敷が原因の火災が起きたらどうしよう…」このような不安を抱いている方がいらっしゃると思います。

では、そのような不安を抱えている方がやっておくべき対策を2つ紹介します。

対策1:自治体にクレームを入れておく

お住まいの自治体に「ゴミ屋敷があって困っている」という事実を伝えておきましょう。ただここで知っておいた方が良いことは、そうしても行政はなかなか動いてくれないということです。

ゴミ屋敷の中の物は、ゴミ屋敷の家主の財産という認識になりますので、自治体行政からしてみれば「個人の敷地内や個人の財産に手を付けられない」「まずそういったことは行政の仕事ではない」「市民の税金を個人の為だけには使えない」という理由でなかなか動いてはくれないでしょう。

ゴミが本当にゴミなのか財産なのか、その線引きは難しいのです。ただ、あまりにも目に余る状況である場合、場合によってはごみ屋敷の家主に行政指導が入る可能性があります。

それでも事態が改善されないですとか、相変わらず近隣住民が困っているとなると、行政代執行と言ってゴミ屋敷の家主がするべき義務を行政が代わりするという形で、ゴミ屋敷のゴミを撤去してくれる場合もあります。

行政代執行法
行政上の強制執行豊富おの一つである代執行の要件と手続きを定めた法律。代執行ができる場合を、他の手段では義務の履行の確保が困難でその履行の放置が著しく公益に反する時に限定し、その手続きとして戒告、通知、費用の徴収等の規定をおいている。工作物の除去、河川・道路の原状回復、建築物の移転・除去などの義務は、代執行の適する典型である。

引用:https://goo.gl/439MR4

対策2:火災保険に入っておく

万が一隣近所のゴミ屋敷が原因の火災が発生し、延焼によりあなたの家が燃えてしまった場合、ゴミ屋敷の家主が燃えてしまった近隣住宅やその家に住んでいた人達への損害賠償はできないでしょう。

仮にゴミ屋敷が原因の火災の場合、その火災に「重過失」があったと認められると、損害賠償請求の事案になり得ますが、いざ損害賠償の賠償額が決まってもゴミ屋敷の家主に資本力がないと難しいでしょう。

重過失
重過失とは、通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかな注意をすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然とこれを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態であるということ。

例えば、油をガスコンロにかけ、その場を離れたため、油に引火して火災になった事案で、その主婦の重過失を認めた判例があります。

出典:くらしの法律百科

またこの国は昔から今まで木造建築の住宅が多くある関係で、火事が起きて他の家も燃えてしまった場合、他の家の賠償までしていると大変なことになるということで、「失火責任法」という明治時代からある法律が、「とりあえず自分の家は自分で守りましょう」というように決めているのです。

失火責任法がある以上、火元の人は特に何も賠償しなくて良いということになっているのです。

なので、火災保険に加入するという言わば自己防衛以外は、ゴミ屋敷が原因だけではありませんが、延焼火災の対応策が無いのです。

ただし、念のために火災保険に加入する前に保険会社に「隣近所の人がゴミ屋敷なんですが、火災保険に加入は可能ですか?」と聞いておくとは重要だと思います。火災保険の保険料は建物の価格によって大きく異なりますが、新築一戸建てで価格がだいたい3,000万~7,000万円の場合は、最もベーシックなブランで年間12,000円~20,000円ほどと言われています。


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まとめ

学生の時にちょっと家が汚い友達の家に行って、「おいおい、これじゃあゴミ屋敷みたいだな~」と言ったことがありますが、テレビ等で実際のゴミ屋敷が写っているのを見ると、理解を超えたゴミ屋敷っぷりに驚きます。

テレビ画面越しでそう思うなら、いざ自分の家の隣家がゴミ屋敷だったらと思うと寒気がします。

「主人が建ててくれた家。私にはここしかない。」冒頭の女性の方は、家だけでなく亡き夫の位牌や仏壇も燃えてしまったそうです。

火事で失ってしまうのは、家だけではありません。その家で過ごした「思い出」も一緒に失ってしまいます。しかし火元の家主や国や政府は何もしてくれないので、火災保険に入るなど自分の力で自分の家を守っていくしかないのです。

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